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シリーズ第6回 「面倒なことを押し付けないこと」
新入社員が定着しない原因のひとつに、「雑用係のように扱われてしまう」という現実があります。
「新人は下働きをして当然」「最初は誰でも苦労するものだ」——こうした昭和的な感覚を、今も無意識に
持っているとすれば、ぜひ今日から改めてください。
新入社員は、会社にとってかけがえのない未来の戦力です。彼らに課す業務には、「育成」と「信頼」という
2つの視点が必要です。ところが、現場の一部では「面倒なこと」「自分がやりたくないこと」ばかりを新人に
任せる傾向が見受けられます。
【悪い例】
ある会社では、新人が入ってくるとすぐに「朝一でコーヒーを入れる」「来客のたびにお茶出しをする」
「コピーやファイリングなどを一手に引き受ける」など、いわゆる“雑用”が集中します。
先輩社員は「自分もやってきたんだから当然」と言いますが、これは「不満の連鎖」にすぎません。
しかも、その雑用は他の社員が日常的には実施していないような“形だけ残った古いルール”であったりします。
たとえば「月初めの朝礼で必ず社訓を唱和する」「データ入力を全部紙でチェックしてからパソコンに入れる」など、
既に非効率と分かっていながら、新人にだけやらせる。
これでは、新人は「なぜ私だけ?」という不信感を持つのも当然です。
【良い例】
一方で、別の会社では、新人にも戦力としての扱いをしていました。
「この業務を通じて、会社のどんな役に立つのか」
「この仕事は最初に覚えると後が楽になる」
そうした説明とともに、担当業務を割り振るようにしています。
たとえば、ある営業事務の新人には、見積書の作成や納期管理などの業務を早い段階で担当させ、
先輩が必ずフィードバックをする体制をとっています。
「責任ある仕事を任せてもらっている」「期待されている」と新人が感じた結果、
1年以内離職がゼロになったそうです。
【「新人だから」は通用しない時代へ】
今の若い世代は、「自分が何のためにここにいるのか」を強く意識しています。
働く意義、成長の実感、納得感のある評価——そうしたものが見えない職場に長くは留まりません。
「新人は右も左もわからないから、とりあえず雑用で…」という感覚は、彼らのやる気を削ぎ、
早期離職の原因になります。(そんなテレビCMがありました…)
新人が能力を発揮するまでに時間がかかるのは当然ですが、「扱い方」を誤ると、芽が出る前に
会社を離れてしまうことになるのです。
【社歴ではなく、共通目標で仲間として認める】
大切なのは、新人を“社歴が短い人”ではなく、“同じ目標に向かう仲間”として見ることです。
「私たちはこういう会社を目指している。そのために、君にはこういう役割を期待している」
そう語りかけることが、もっとも信頼関係を築く方法です。
また、先輩社員の方々には、「自分が新人だったころ、不愉快だったことは何か」「どんなことをやらされたか」
「何が嫌だったか」を一度思い返していただきたいと思います。
新人に不愉快な思いをさせないという姿勢は、組織としての成熟度を示すものでもあります。
新入社員に面倒なことを押し付けるか、やりがいを与えるか。
この差は、1年後、3年後の組織の力に直結します。 定着率が高い企業は、例外なく
「新人を一人の社員として対等に扱っている」会社です。
“下働き”要員ではなく“未来の仲間”として、育てていきましょう。