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求職者に選んでもらえる会社になる

シリーズ第7回 「ハラスメント対策は就業規則から」

中小企業の経営者の皆さまにとって、「ハラスメント対策」は避けて通れないテーマです。
求職者が会社を選ぶ際に、「この会社は安心して働けるか」を判断する大きな材料となっています。
逆に、ハラスメントへの対応が甘いと、せっかく採用した人材も短期間で退職してしまいます。

1.会社で起きるハラスメントの種類

ハラスメントというと「セクハラ」や「パワハラ」が真っ先に思い浮かぶかもしれません。
しかし実際には、以下のように多岐にわたります。

  • セクシュアルハラスメント(性的な言動による不利益や不快感)
  • パワーハラスメント(職場での優位性を利用した言動による精神的・身体的苦痛)
  • マタニティハラスメント(妊娠・出産・育児休業を理由にした不利益扱い)
  • モラルハラスメント(人格を否定するような継続的な言動)
  • カスタマーハラスメント(顧客からの過剰な要求や暴言)

つまり、会社が「うちには関係ない」と思っていても、実際にはどこにでも起こり得るのです。

2.なぜハラスメントは発生するのか

表面的には「一部の社員の性格が悪いから」と片付けられがちですが、
実際には会社の体質そのものが原因であるケースが多く見られます。

  • 業務の進め方が非論理的・非生産的で、全体にストレスが溜まっている
  • 年功序列が根強く、実力主義の人材活用ができていない
  • 経営層が現場に無関心で、専横的な管理職のやり方を放置している
  • 業績不振や低待遇のため、社員がフラストレーションをため込み、弱い立場の人へぶつけてしまう

このような環境下では、ハラスメントは“個人の問題”ではなく“組織の問題”として発生します。

3.具体的な対策

ハラスメント対策は「きれいごと」ではなく、具体的な制度として整備することが必要です。

  1. 就業規則にハラスメント禁止と懲戒規程を明記する
    → 「ハラスメントは許さない」と宣言するだけでは不十分です。
    実際に処分を行うには、就業規則に懲戒規程を設けておかなければ法的に処罰できません。
    (例:降格、出勤停止、懲戒解雇などの種類と事由を明記しておくこと)
  2. 相談窓口・通報窓口を設置する
    → 社内だけでなく、社外の専門家(社労士や弁護士など)に委託することで、安心感が増します。
  3. 実例を示して教育する
    → 「何がハラスメントにあたるか」を社員が具体的に理解できるよう、過去の裁判例や典型事例を紹介します。
  4. 発覚した場合は必ず処罰する
    → 「有力社員だから見逃す」という姿勢は最も危険です。会社全体の信頼を失います。
  5. 入社時・定期的な研修で方針を周知する
    → 繰り返し教育することで、「会社の文化」として根付かせます。

4.経営者の責任

ハラスメント防止の最大の責任は、経営者にあります。
「うちは小さい会社だから大丈夫」という考えは通用しません。むしろ少人数だからこそ、
一人の言動が会社全体の雰囲気を大きく左右します。

さらに近年は、厚生労働省がパワハラ防止措置を企業に義務づけており、
違反すれば行政指導や企業名公表の可能性もあります。

就業規則に懲戒規程を定めることは、単なる“形式”ではなく、会社を守る“盾”であり、
社員を守る“傘”でもあるのです。

まとめ

ハラスメント対策は、社員の安心と信頼を生むだけでなく、求職者に「ここなら長く働ける」と思ってもらえる
大きな武器になります。
逆に「ハラスメントが横行している会社」という噂が立てば、人材は一気に離れていくでしょう。

経営者としてできることは明確です。

  • 就業規則にハラスメント禁止と懲戒規程を明記すること
  • 実効性のある運用を徹底すること

その積み重ねが、会社を「求職者に選ばれる会社」にしていくのです。

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