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新入社員が定着する絶対条件

シリーズ 第7回「叱ると怒るを間違えない」

新入社員を育てるうえで、多くの先輩社員や上司が直面するテーマが「叱る」と「怒る」の違いです。
この二つは似ているようで、実はまったく別の行為です。そして、その違いを正しく理解して対応するかどうかが、
新入社員の定着を大きく左右します。

「叱る」と「怒る」は根本的に違う

「叱る」とは、相手に対する期待や愛情があり、その人がよりよく成長してほしいという願いが込められています。
相手の行動を正すことが目的であり、本人の成長を願った建設的な働きかけです。

一方で「怒る」は、自分の感情の爆発にすぎません。相手の成長よりも、自分のイライラやフラストレーションを
ぶつけることが目的化してしまい、最悪の場合は「憂さ晴らし」と受け止められます。
ここには愛情も期待もなく、ただ関係を悪化させるだけです。

新入社員は本能的に見抜く

新入社員は、まだ社会経験が浅いとはいえ、「この人は自分のことを思って言ってくれているのか」
「ただ感情的に怒っているのか」を敏感に感じ取ります。

愛情を持って伝えられた言葉は、耳が痛くても「自分のためだ」と理解しようと努力します。
しかし、感情をぶつけられただけの怒声は、反発や憎しみしか生みません。

誰もが通ってきた道

今、会社で指導する立場にある先輩社員も、かつては同じように右も左も分からず、失敗を繰り返してきました。
それでも定着し、力を発揮できるようになったのは、周囲に正しく導いてくれる人がいたからです。

自分も未熟だった頃に、誰かに支えられて今がある」――この意識を持つことが、
新人への接し方を誤らない大きなポイントになります。

「叱る」べき場面とは?

では、どんなときに「叱る」ことが必要なのでしょうか。代表的なケースは以下の通りです。

  1. 当然できることを怠ったとき
     (例:あいさつや報告をしなかったなど)
  2. 繰り返し注意を受けているのに改善しないとき
     (注意力散漫で、同じミスを繰り返す場合)
  3. もっとできると期待しているのに挑戦しないとき
     (安全策ばかりで、レベルアップを避けている場合)

これらはいずれも、新人の成長を願うからこそ、敢えて厳しく伝える必要がある局面です。

ハラスメントとの境界線

2022年からは、労働施策総合推進法によりパワーハラスメント防止措置が全事業所で義務化され、
男女雇用機会均等法でもセクシャルハラスメント防止が求められています。

法律上は、「相手がパワハラと感じたらパワハラになる」と広く理解されていますが、
本質的には「愛情ある叱責か、単なる怒りか」が境界線です。

  • 成長を促す意図があり、冷静かつ具体的に伝える → 叱る(適切な指導)
  • 感情を爆発させ、大声や人格否定を伴う → 怒る(ハラスメント)

就業規則の中に「ハラスメント禁止」と「懲戒規程」を明記しておくことも重要です。
これがなければ、実際に問題が起きた際に処分できません。法令遵守の観点からも、必ず整備しておきたい部分です。

最も重要なのは「育てる気持ち」

結局のところ、どんな法律やルールを整えても、
新入社員を一人前に育てたい」という気持ちがあるかどうかが最も大切です。

「叱る」は愛情、「怒る」は感情――
その違いを常に意識し、相手を人材として大切にする姿勢こそが、
新入社員を定着させる最大の条件だと言えるでしょう。

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