
お電話でのお問い合わせ080-3007-4864
シリーズ第8回 「指示は方法ではなく目的を伝えること」
新人教育の現場でよくある場面に「指示をしても思った通りに動いてくれない」という声があります。
その原因の多くは、指示の出し方にあります。指示とは「作業手順を伝えること」ではなく、
「目的を共有し、その目的達成に向けて相手に考えて動いてもらうこと」です。
方法だけを伝える危うさ
例えば、部長が部下にこう指示したとします。
「明日、東京発9時ごろの便で福岡までの航空券を取ってくれ」
実際の目的は「福岡で13時からの会合に出席すること」でした。
ところが、その時間帯の便はすべて満席。部下は「予約できませんでした」とだけ報告し、
部長は「会議に間に合えばいいんだから、前日移動や新幹線も考えろ!」と叱責しました。
しかし、部下は「会議に間に合う」という出張の目的を聞いていません。
単に「チケットを取る作業員」として扱われたため、判断の余地がなかったのです。
正しい指示の仕方
もし部長がこう言っていたらどうでしょうか。
「明日、福岡で13時から会合に参加する。そのために9時ごろの便を予約してほしい」
このように目的を伝えていれば、仮に朝便が満席でも「前日最終便」や「新幹線での移動」という
代替案を自ら考え、提案することができます。
つまり、部下を「作業員」ではなく「目的達成のために考える仲間」として動かすことができるのです。
命令と訓令の違い
ここで整理しておきたいのが「命令」と「訓令」の違いです。
ビジネスにおいて求められるのは後者です。単なる命令型の指示は、新人を思考停止に追いやり、
「言われたことだけやれば責任はない」という姿勢を生み出してしまいます。
成長機会を奪わない
新人の段階から「頭を使わず、体だけ動かす」仕事の仕方を覚えてしまうと、自ら考える習慣が身につきません。
その結果、成長意欲が削がれ、戦力として物足りない人材になってしまいます。
逆に、目的を共有し「どうすれば達成できるか」を考えさせれば、本人の工夫や判断力が磨かれ、
成功体験を重ねることにつながります。これは新人にとって大きなモチベーションとなり、
会社への信頼感と定着にも直結します。
優秀な新人ほど離れていく
「頭を使わなくても言われたことだけやっていれば給料はもらえる」という職場環境は、一見ラクに見えますが、
やる気に満ちた優秀な新人にとっては大きな不満の種です。
「自分の能力を活かせない」「成長の機会がない」と感じた新人は、やがて会社を去り、
より成長できる場を求めて転職してしまいます。
結論:指示とは頭を使わせること
管理職や先輩社員が意識すべきことは明快です。
指示は、体ではなく頭を使わせるもの。
目的を明確に示し、その達成のために部下自身が最善の方法を考えられるように導くことです。
その積み重ねが新人を成長させ、組織全体の力を底上げします。
命令で動く人材ではなく、目的を理解して動ける人材を育てることこそ、定着と生産性向上への近道なのです。