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シリーズ第8回 「部門間の評価基準を公平に」
社員の定着率を高め、長く安心して働ける職場をつくるうえで、最も重要な要素のひとつが「公平な評価制度」です。
会社内では、営業のように業績が目に見えやすい「花形部門」と、総務・経理・製造・品質管理などのように
目立たない「支援部門」があります。
しかし、どちらも会社の目的を達成するためには欠かせない存在であり、
本来であれば「優劣」や「上下」はあってはならないはずです。
ところが現実には、「営業部長が強い会社では営業職でなければ昇給・昇格が難しい」「数字を作る部門が一番えらい」
といった風潮がいまだ根強く残っています。
このような評価の偏りは、支援部門に属する社員のモチベーションを著しく低下させ、
結果的に有能な人材の退職につながりかねません。
公平な人事評価制度とは何か
人事評価制度を設計する際には、会社に存在するすべての部門を「同一の物差し」で見ることが必要です。
つまり、会社の各部門を横軸に、職務の難易度や責任の重さを縦軸にして共通の等級表を作成し、
その上で賃金基準や昇格要件を設定するという考え方です。
このとき重要なのは、営業部門の最上位等級と、総務や経理など内勤部門の最上位等級を同等に扱うことです。
業務内容が違っても、会社への貢献度や求められるスキルレベルは同じ「価値」をもって評価されるべきです。
たとえば、営業部門は売上拡大を通じて会社の収益を支え、総務や経理はその基盤を整え、
トラブルを未然に防いで会社を安定させています。どちらが欠けても会社は成り立ちません。
したがって、どちらも同じ「価値」を有する仕事であると位置づけ、等級・基本給を公平に
設定することがポイントになります。
公平な制度がワーク・エンゲイジメントを高める
「自分の部門だけが報われない」「努力しても評価されない」――こうした不公平感が広がると、
社員はやる気を失い、エンゲイジメント(仕事への没頭・熱意・活力)が低下します。
その一方で、「どの部門でも成果を出せば正当に評価される」「役割の違いを超えて貢献が認められる」
という実感があれば、社員は自分の仕事に誇りを持ち、モチベーションが高まります。
この「公平な評価への信頼感」こそが、ワーク・エンゲイジメントを高め、退職防止につながる最大の要因です。
「花形部門」はつくらない
会社はチームです。チームの勝利に必要なのは、得点を決めるストライカーだけでなく、
守備を固めるディフェンダーや戦略を練る監督です。
営業だけが賞賛され、支援部門が軽視される組織は、やがてバランスを崩します。
「花形部門」という概念をなくし、すべての部門が「それぞれの使命を果たすことが組織の成果につながる」
と社員全員が理解できる仕組みを整えることが、管理職に求められる真のマネジメントです。
まとめ
部門間の公平な評価制度は、単なる給与テーブルの話ではありません。
それは、「どの仕事にも価値がある」というメッセージを社員に伝える、会社の姿勢そのものです。
この姿勢があって初めて、社員は会社を信頼し、長く働き続けようという気持ちを持ちます。
「公平な評価基準のもと、すべての部門が一体となって目標を目指す」
それが、ワーク・エンゲイジメントを高め、離職を防ぐ確かな道なのです。