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就業規則を経営に活かす

シリーズ第17回 「副業・兼業ルールを導入する際の留意点」

昨今、人手不足や働き方の多様化を背景に、「副業・兼業」をめぐる関心が高まっています。
中小企業においても、「副業を認めるべきか」「どこまで許容するべきか」という相談が増えています。

結論から言えば、副業・兼業は禁止するものから“適切に管理するものへと考え方を転換する必要があるテーマです。

「副業禁止」は本当に有効か?

従来、多くの会社では就業規則において「副業禁止」と定めてきました。
しかし、このような一律禁止は、憲法で保障されている職業選択の自由との関係で問題となる可能性があります。

もちろん、会社の秩序を守るための一定の制限は認められますが、
無条件に全面禁止とする規定は、合理性を欠くと判断されるリスクがあります。

そのため現在では、

  • 原則として副業は認める
  • ただし一定の条件を付ける

という形でルールを設計する会社が増えています。

副業を認める場合の基本的な条件設定

副業・兼業を認める場合、最も重要なのは
本業への影響を防ぐことです。

具体的には、以下のような条件を設けることが考えられます。

  • 本業の業務に支障が出ないこと
  • 疲労の蓄積により安全配慮義務に反しないこと
  • 競業行為や情報漏えいにつながらないこと
  • 副業・兼業が公序良俗に反しないこと
  • 事前申請・許可制とすること

特に注意したいのは、「許可制」とすることで、会社が状況を把握できる状態を作ることです。

労働時間の通算という重要な論点

副業・兼業で見落とされがちなのが、労働時間の通算です。

労働基準法では、複数の事業場で働く場合、
労働時間は通算して管理することが原則とされています。

つまり、

本業:1日8時間
副業:2時間

であれば、合計10時間となり、
2時間分は時間外労働として扱われる可能性があります。

この点は、企業側にとってもリスクとなる部分です。

健康管理と残業代リスク

さらに重要なのが、健康管理と賃金の問題です。

副業によって長時間労働となれば、企業には安全配慮義務が生じます。
また、場合によっては、通算労働時間に基づき
時間外割増賃金の支払い義務が発生する可能性もあります。

ただし実務上は、副業先の労働時間を完全に把握することが難しいケースも多く、
そのためにも

  • 申告制度の整備
  • 長時間労働の抑制ルール

が重要になります。

副業・兼業は「リスク」だけではない

ここまで見ると、副業・兼業はリスクばかりのように感じるかもしれません。
しかし、視点を変えると、これは新しい人材活用のチャンスでもあります。

例えば、あるIT系の中小企業では、

  • 本業を持つエンジニアを副業人材として採用
  • 週2〜3日の勤務を前提とした契約
  • 専門性の高い業務のみを担当

という形で人材を確保しています。

結果として、

  • 採用コストの削減
  • 即戦力人材の確保
  • 柔軟な人員配置

といった効果が出ています。

また、飲食業やサービス業でも、
「副業前提の人材」を積極的に受け入れることで、
人手不足の解消につなげている事例も当たり前のように見られます。

まとめ:禁止から「設計と活用」へ

副業・兼業は、もはや避けて通れないテーマです。

✔ 一律禁止はリスクがある
✔ 本業への影響を防ぐルール設計が必要
✔ 労働時間の通算と健康管理が重要
✔ 場合によっては残業代の問題も発生

これらを踏まえた上で、単に制限するのではなく、

「どう活用するか」まで踏み込んで考えること

が、これからの労務管理には求められます。

就業規則を単なるルールではなく、
人材戦略のツールとして活用できるかどうか。

副業・兼業の取り扱いは、その分かれ目になるテーマと言えるでしょう。

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