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【トラブルを未然に防ぐ労務管理】

第7回 「退職勧奨・自己都合・会社都合」の違い

「この社員にはもう辞めてもらうしかない…」
経営者として、そう考えざるを得ない場面があるかもしれません。
しかし、そのときにまず考えていただきたいのが、
「退職してもらう」という結論に至るまでに、会社は何をしてきたのかということです。
今回は、「退職勧奨」「自己都合退職」「会社都合退職」のうち、特にトラブルになりやすい退職勧奨について考えてみます。

まず、3つの違いを簡単に整理しましょう。
「自己都合退職」は、社員本人の意思によって退職するものです。
一方、「会社都合退職」は、会社側の事情によって雇用を継続できなくなる場合などが代表的です。
そして「退職勧奨」は、会社が社員に対して「退職を検討してほしい」と働きかけるものです。
ここで重要なのは、退職勧奨は解雇ではなく、社員が応じるかどうかを自ら判断するものだということです。

ところが、実務ではこの部分を曖昧にしたまま、「会社が辞めてほしいのだから、辞めてもらえばいい」という感覚で
進めてしまうケースがあります。ここに大きな危険があります。

例えば、業績不良や職務上の問題がある社員に対して退職勧奨を行うのであれば、会社にはまず、
その問題を改善させるためにどれだけ努力したのかということが問われます。

「仕事ができないから辞めてもらう」
「会社のやり方に従わないから辞めてもらう」 では、あまりにも短絡的です。

まず必要なのは、
📌 何が問題なのかを本人に伝える
📌 会社が求める水準を明確にする
📌 教育・指導を行う
📌 改善の機会を与える
📌 改善状況を確認する
📌 それでも改善しない場合には、さらに対応を検討する
 というプロセスです。

そして、この過程を記録として残しておくことが非常に重要になります。
その根拠となるのが「就業規則」です。
・就業規則に何が規定されているのか。
・社員にどのような義務があるのか。
・何を禁止しているのか。
・どのような場合に懲戒の対象となるのか。

 ここが会社の人事労務管理の基本になります。

当然ですが、就業規則に規定されていないことを、後から「会社として禁止している」として処分することはできません。
また、就業規則に違反する行為があったからといって、直ちに退職勧奨や解雇を行ってよいということでもありません。
ルール違反があったことと、どのような措置を取ることが妥当なのかは別問題です。

社員にとって、退職勧奨や解雇、まして懲戒解雇は、生活そのものに重大な影響を与える非常に重い措置です。
だからこそ、会社としては、できる限り「辞めてもらう」という結論に至らないよう、教育や指導によって
会社が求める水準まで引き上げる努力をする。
それが会社の責任だと考えています。

「辞めさせるための指導」ではなく、「辞めなくても済むようにするための指導」
ここが大切なのです。そして、どうしても改善できず、会社として万策尽きた。
そのときに初めて、退職勧奨などを含めた次の選択肢を検討する。

それくらい慎重になる必要がありあります。

もし、退職勧奨や懲戒解雇が日常的に行われている会社だったら、社員はどんな気持ちで毎日働くでしょう。
「明日は我が身だ」
「何か失敗したら辞めさせられる」
そんな恐怖を抱えながら仕事をしているとしたら、社員が前向きに挑戦できるでしょうか。
会社として、決して健全な状態とは言えません。

退職勧奨や懲戒処分を「一罰百戒」として他の社員への見せしめとして使うことも、好ましくないと考えます。
これらは社員を恐れさせるための道具ではなく、会社としての「苦渋の選択」であるべきです。
人を辞めさせることは、労務管理の成果ではありません。

どうすればその社員を成長させ、会社の戦力として活躍してもらえるのか。まず、そこから考える。

それでもどうしても難しい場合に、最後の選択肢として退職勧奨等を検討する。
この順番を間違えないことが、トラブルを未然に防ぐだけでなく、社員から信頼される会社をつくるためにも
重要ではないでしょうか。

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