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トラブルを未然に防ぐ労務管理

シリーズ第9回「その給与、本当に最低賃金をクリアしていますか?

「毎月21万円払っているから、最低賃金は大丈夫です」
給与について、このように考えている会社は少なくありません。
確かに、給与明細の「支給総額」から計算すれば、東京都の最低賃金を上回っているように思えるケースがあります。

しかし、最低賃金を確認するときは、合計支給額だけを見てはいけません。
なぜなら、最低賃金を計算するときには、計算に入れる賃金と、入れない賃金があるからです。

「月21万円払っているから大丈夫」は本当?

例えば、ある会社の給与が次のようになっているとします。
・基本給  150,000円
・精勤手当  50,000円
・通勤手当  10,000円
合計支給額 210,000円

年間休日は120日、1日の所定労働時間は8時間です。
会社では、次のように計算しました。
210,000円 × 12か月 ÷(365日-120日)÷ 8時間= 1,285.7円(時給)

「これなら東京都の最低賃金を上回っているので問題ない」(2026年10月)
そう考えてしまうのも無理はありません。ところが、この計算には落とし穴があります。

最低賃金の計算から除外される賃金があります

最低賃金の計算では、毎月の給与をすべて合計するわけではありません。
例えば、
・精皆勤手当
・通勤手当
・家族手当
・時間外・休日・深夜労働に対する割増賃金
・賞与など1か月を超える期間ごとに支払われる賃金
・臨時に支払われる賃金
 などは、最低賃金の計算から除外されます。

今回の例では、精勤手当50,000円と通勤手当10,000円は計算に入れません

したがって、最低賃金の計算対象となるのは基本給150,000円です。
150,000円 × 12か月 ÷(365日-120日)÷ 8時間= 918.4円(時給)

となります。

給与の合計は月21万円あります。
しかし、最低賃金の計算対象となる賃金だけを取り出して計算すると、時給換算額は大きく変わってしまいます。

つまり、「毎月いくら払っているか」だけでは、最低賃金をクリアしているかどうかは判断できないということです。

賃金の「中身」を確認する
ここで、もう一つ大切なことがあります。それは、賃金は「名前」だけで判断しないということです。
例えば、「精勤手当」という名称になっていても、実際にはどのような条件で支給されているのかを確認する必要があります。

「精勤手当だから、この計算から外す」と、手当の名前だけを見て判断するのではなく、
・何に対して支払っているのか
・どのような条件で支払っているのか
・実際にはどのように運用しているのか
 を確認することが大切です。

例えば、就業規則には「無欠勤の場合に精勤手当を支給する」と書いてあるのに、
実際には「多少の欠勤があっても毎月支給している」
このような場合には、
規程に書かれている内容と実際の運用が一致していないので規程を改定するか運用を正しくするかを再確認
した方がよいでしょう。
また、基本給に含めて位置づけを明確にした方がよいかもしれません。

給与は、単に「いくら払ったか」だけではなく、
「何に対して、どのような賃金として払っているのか」まで見ていくことが重要です。

一度、給与明細を点検してみましょう

最低賃金の確認をするときは、給与明細の一番下にある「支給総額」だけを見るのではなく、
一つひとつの項目を確認してみてください。

「この手当は最低賃金の計算に入るのか?」、「この手当は何を理由として支給しているのか?」
「就業規則や賃金規程、雇用契約書と実際の支給方法は一致しているか?」
こうした確認をしておくことが、最低賃金をめぐるトラブルを未然に防ぐことにつながります。

特に最低賃金が改定される時期には、「とりあえず給与総額を確認する」だけで終わらせず、
給与の中身まで点検することをおすすめします。

そして実は、この「賃金の中身を確認する」という考え方は、最低賃金だけの話ではありません。
時間外勤務手当(残業代)を計算するときにも、どの賃金を計算の基礎にするのかが重要になります。

こちらについては、次回以降、もう一歩踏み込んで考えてみたいと思います。

「うちはちゃんと払っているから大丈夫!」
その前に、一度「何を、いくら払っているのか」を確認してみませんか?

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