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シリーズ第8回 「会社都合による解雇」
先週は「退職勧奨」について取り上げました。
退職勧奨は、社員側に業務上の問題などがある場合であっても、いきなり「辞めてもらう」のではなく、
まず教育・指導によって改善できないかを会社が努力することが重要だ、というお話でした。
では、今回は反対のケースです。
・会社の業績が大きく悪化した。
・事業を廃止せざるを得なくなった。
・部門そのものをなくさなければ会社が存続できない。
このように、社員には何の落ち度もないにもかかわらず、会社側の事情によって雇用を継続することが難しくなる場合があります。
このような人員整理のための解雇を「整理解雇」といいます。
ここで、先週の退職勧奨との大きな違いがあります。
退職勧奨では、「社員側に問題がある」という事情が問題になります。
一方、整理解雇では、問題の原因は会社側にあります。
だからこそ、経営者の責任はより重いと考えています。
「会社の業績が悪いから、人を減らします。」
それだけで社員を解雇できるわけではありません。
解雇は、客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当でない場合には、権利濫用として無効となります。
特に整理解雇では、一般に次のような点が厳しく問われます。
① 本当に人員削減が必要なのか
② 解雇を回避するための努力をしたのか
③ 誰を対象とするのか、その人選は合理的なのか
④ 社員に対して十分な説明・協議を尽くしたのか
この4点を単なる法律上のチェック項目として捉えず、項目の一つひとつに、
「会社は社員を守るために、最後まで努力したのか」という経営者の姿勢が問われていると考えるべきです。
例えば、人員削減をする前に、
・配置転換はできないか
・業務を見直せないか
・役員報酬や経営者自身の待遇を見直せないか
・賞与や残業など、他の人件費を含めて検討したか
・一時的な休業など別の方法はないか
・希望退職を募る必要はないか
こうした解雇回避の努力をどこまで行ったのか。
そして、その努力を客観的に説明できる記録として残しているか。
ここが重要です。
もちろん、会社には「会社を存続させる」という重大な責任があります。
会社が倒産してしまえば、社員の雇用そのものを守ることができません。
だから、「社員を守るためには、どんな場合でも解雇してはいけない」ということではなく、
むしろ逆で、会社を存続させるために、どうしても人員整理が必要になるのであれば、
その判断から逃げずに適切なプロセスが必要だということです。
しかし、そのときには経営者自身が、説明を尽くし、できる限りの配慮を行い、再就職への支援などについても検討する。
会社都合による解雇は、経営者にとっても「苦渋の選択」でなければならないのです。
もし、業績が悪くなるたびに、簡単に社員を切る会社だったら、社員は会社を信頼できるでしょうか。
「会社が苦しくなったら、自分も切られる。」
そんな不安を抱えている社員が、会社の将来のために本気で頑張れるでしょうか。
人を大切にすることと、会社を守ることは、本来対立するものではありません。
会社を守るために人を守る。
人を守るために会社を守る。
この両方を考えるのが経営者の責任なのではないでしょうか。
そして、どうしても雇用を維持できないという結論に至ったとき、
その判断が「会社の都合だから仕方ない」という一言で終わるのか、
それとも、「会社として、ここまで努力しました。それでも、どうしても守り切れませんでした。」
と社員に説明できるのか。この違いが非常に大きいと思います。
先週の退職勧奨では、「辞めてもらう前に、もう一度育てる。」という考え方でしたが、
今回の会社都合による解雇では、「辞めてもらう前に、会社としてできることをすべてやったのか。」
ということが問われます。
どちらも、簡単に人を辞めさせるための制度ではありません。
人を辞めさせるという重い判断を、最後の最後まで慎重に考え抜く。
それこそが、トラブルを未然に防ぐ労務管理であり、
同時に、社員から信頼される会社をつくる経営者の責任ではないでしょうか。