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トラブルを未然に防ぐ労務管理

シリーズ第16回 「パート社員の昇給基準を考える」

パート社員の昇給は、どのような基準で決めていますか?

「長く働いてくれているから」「仕事を頑張っているから」といった判断で昇給を決めている会社もあるのではないでしょうか。
もちろん、勤続年数や仕事への姿勢を評価すること自体に問題はありません。
しかし、会社として評価の基準が曖昧なままだと、社員から不満が出たり、正社員との待遇差について説明できなかったりする
可能性があります。

2026年10月には、パートタイム・有期雇用労働者の待遇改善に向けて、同一労働同一賃金ガイドラインや雇用管理に関する
指針などが改正されました。
今回は、この改正をきっかけに、パート社員の昇給基準を人事制度の面で活用することを考えたいと思います。

■1.法令遵守の観点から

同一労働同一賃金の基本的な考え方は、正社員とパート社員との間にある不合理な待遇差をなくすことです。
待遇の違いがある場合には、職務内容や責任の程度、配置転換の範囲などを踏まえ、その違いが合理的なものかを検討する
必要があります。

例えば、正社員とパート社員が同じ業務を担当し、求められる能力や責任にも大きな違いがないにもかかわらず、
「パートだから」という理由だけで昇給の機会を設けないとすれば、問題となる可能性があります。

今回の改正では、賃金の決定に当たり、職務の内容や成果、意欲、能力、経験などを公正に評価し、昇給に反映することも
重要なポイントとなっています。
まずは、自社の賃金規程や昇給ルールを確認し、正社員とパート社員の待遇差について、その理由を説明できる状態に
しておきましょう。

■2.人材を有効に活用する観点から

パート社員の中には、豊富な経験や高い能力を持ち、会社を支えている方が少なくありません。
新入社員の教育係をパート社員が担っている会社もあるぐらいです。

しかし、どれだけ仕事を覚え、業務の幅が広がっても、昇給につながる仕組みがなければ、本人の意欲が低下してしまうことも
考えられます。

例えば、次のような基準を設けてみてはいかがでしょうか。
・担当できる業務の種類や範囲が広がった
・仕事の正確性や処理能力が向上した
・新人への指導や後輩の育成を担えるようになった
・業務改善や効率化に貢献した

このような評価項目があれば、会社は社員の成長を把握しやすくなり、社員も「何ができるようになれば評価されるのか」を
理解できます。
大切なのは、単に昇給の金額を決めることではなく、会社が期待する役割と、社員の成長を結びつけることです。

■3.会社全体の活力アップにつなげる

昇給基準を整えることは、パート社員だけでなく、会社全体の活力向上にもつながります。

例えば、能力や役割に応じた段階的な評価制度を設ければ、社員は次の目標を持って仕事に取り組めます。
また、パート社員が担当できる業務を増やすことで、正社員の負担を軽減し、より高度な業務や管理業務に集中できるようになる
可能性もあります。

そのためには、評価項目や昇給の条件を明確にし、本人に説明することが大切です。評価結果を伝える面談の機会を設ければ、
本人の希望や課題も把握しやすくなります。
もちろん、評価制度は複雑である必要はありません。
中小企業であれば、まずは業務の習熟度や担当できる仕事の範囲など、分かりやすい基準から始める方法もあります。

■まとめ

パート社員の昇給基準は、法令を守るためだけのものではありません。社員の能力や意欲を引き出し、人材を有効に活用するための
経営上の仕組みでもあります。

今回の法改正を機に、自社の昇給基準を見直してみてはいかがでしょうか。
その際、大事なポイントは正社員とパート社員共通の尺度を設けることです。
この業務ができる人は正社員、パートに限らず同じ賃金(評価)にするということです。
決してパート社員だけの仕組みにせず、全社員を対象とする必要があります。

「頑張っているから昇給する」から、「何を評価し、どう成長すれば昇給につながるのかが分かる」仕組みへ。

その一歩が、社員の納得感を高め、会社全体の活力を引き出すことにつながるはずです。

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