お電話でのお問い合わせ080-3007-4864

シリーズ第2回目「割増賃金の計算ミスを防ぐチェックポイント」
労働基準法を正しく理解し、会社としての信頼を維持するために、大切なテーマが「割増賃金の正しい計算」です。
計算を誤ると、未払い残業代として遡って請求されるだけでなく、社会的評価を損なう可能性があります。
今回のテーマでは、実務で特に間違えやすいポイントや法改正された内容をご紹介します。
1.割増賃金の対象になる賃金項目
まず、割増賃金の基礎となる「割増賃金の算定基礎」に含めるべき項目です。
算定基礎に含まれる賃金の考え方は明快で、
“労働の対償として支払われるすべての賃金” が対象です。
具体的には以下が該当します。
・基本給
・職務手当
・資格手当
・役職手当
・皆勤手当
などなど、労働の対価 に当たるものはすべて算入します。
2.割増賃金の対象にならない賃金項目
逆に、割増賃金の基礎から除外できる賃金項目は明確に7つです。
・家族手当
・通勤手当
・別居手当
・子女教育手当
・住宅手当
・臨時に支払われる賃金(結婚祝金等)
・1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
ここで注意が必要な項目としては、家族手当と住宅手当です。
家族手当については、扶養家族の有無、人数に関係なく、
「従業員一律に全員同じ金額を支給」する場合などは、除外できません。
配偶者は○○円、その他の扶養家族は1人○○円という制度である必要があります。
住宅手当も同じように、「賃貸住宅居住者は○○円、持ち家は○○円」と従業員が負担する居住費に応じている場合
でないと除外はできません。
住宅手当という名目で支給すればすべて除外できるというわけではありません。実態が重要になります。
3.割増賃金の計算実例
実務で迷うポイントは、「どの金額を基礎にすべきか」です。
【実例】
基本給:240,000円
手当 ①資格手当 10,000円
②家族手当 15,000円(配偶者10,000円、子ども5,000円)
(この場合の家族手当は割増賃金の算定から除外OK)
月の所定労働時間:160時間
所定基礎となる金額は、240,000円 + 10,000円 = 250,000円
割増賃金の時給単価は、250,000円 ÷ 160時間 = 1,562.5円 ⇒ 1,563円(50銭以上切り上げ)
時間外労働(25%割増)は、1,563円 × 1.25 = 1,953.75円 ⇒ 1,954円(50銭以上切り上げ)
4.法定休日と所定休日の割増率の違い
勘違いしやすいのが 休日労働の割増計算 です。
・所定休日(会社が定めた休日): → 時間外扱い(25%割増)
・法定休日(週1回または4週4日の休日): → 法定休日労働(35%割増)
「日曜日に働いた=必ず35%割増」ではありません。
会社が日曜を所定休日にしているのであれば、25%割増であり、35%にはなりません。
ここを間違えている会社は非常に多いため、
「会社の就業規則で定めた休日」と「法定休日」を必ず区別する ことが重要です。
5.誤解されている固定残業手当
固定残業手当は便利な制度ではありますが、非常に多くの会社で誤用されています。
よくある誤りは以下の通り。
・固定残業代と基本給の合計金額を提示し、基本給と固定残業手当の内訳がない
・実際の残業時間が固定時間を超えても追加支給しない
・「固定残業代=残業をすることが前提」と会社も従業員も思い込んでいる
法律上の必須の説明は、就業規則(賃金規程)に定めることを前提として、以下3点です。
1.基本給部分と固定残業部分を明確に区分して明示(明確区分性)
2.固定残業代が何時間分の時間外、休日労働、深夜残業労働を含んでいるのかを明示(対価性の明確化)
3.固定残業代の時間数を超えた場合の別途追加支払い
以上のポイントが正しく対応できているかを改めて点検してみてください。