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労働基準法を正しく理解し守る

シリーズ第4回「変形労働時間制の導入と運用の落とし穴」

「繁忙期だけどうしても残業が多くなる」「閑散期は仕事量が少ない」
このような業種・業態において、よく検討される制度が変形労働時間制です。
制度自体は非常に有効ですが、理解が不十分なまま導入・運用してしまうと、
気づかないうちに労働基準法違反になっているケースも少なくありません。
今回は、変形労働時間制の基本と、実務上の落とし穴について整理します。

1.変形労働時間制の概要

変形労働時間制とは、一定期間を平均して週40時間以内であれば、
特定の日や週に1日8時間・週40時間を超えて働かせることができる制度です。

代表的なものとして、
 ■1か月単位の変形労働時間制
 ■1年単位の変形労働時間制
  などがあります。
ただし、「変形労働時間制を採用します」と宣言するだけでは使えません。

✅ 就業規則への定め
✅ 労使協定の締結・届出
✅ 対象者・対象期間・勤務時間の明確化

といった要件をすべて満たして初めて有効になります。

2.変形労働時間制のメリット

この制度の最大のメリットは、業務の繁閑に合わせた柔軟な人員配置ができる点です。

①繁忙期にしっかり働いてもらえる
②閑散期は早く帰れる・休日を増やせる
③無駄な残業代を抑えやすい

会社側だけでなく、
「忙しい時期と休める時期がはっきりしている」ことで、働く側の納得感につながるケースもあります。

3.デメリットと注意点

一方で、制度設計や管理が甘いと、デメリットが一気に表面化します。

①勤務時間管理が複雑になる
②管理職が制度を理解していないと誤運用が起きやすい
③「長時間労働を正当化する制度」と誤解されやすい

特に注意したいのは、
「変形だから何時間でも働かせていい」わけではないという点です。

4.よくある誤運用の実例

よくある誤りの一つが、次のようなケースです。

「1か月単位の変形労働時間制を導入しているので、
忙しい週は毎日10時間働いても問題ない」

これは誤りです。

変形労働時間制では、
あらかじめ具体的な勤務日・勤務時間を特定しておく必要があります。

後から
「今月は忙しいから延ばそう」
という運用は認められていません。また、月の暦日により決定する月間の法定労働時間を
超える勤務時間に対しては、時間外手当を支給することは当然です。

5.制度の本質を忘れないことが重要

変形労働時間制は、
「週40時間を超えて働かせるための制度」ではありません。

本来の目的は、

①繁忙期と閑散期をならす
②従業員の負担を平準化する
③長期的に無理のない働き方を実現する

ことにあります。

制度を正しく理解し、
「会社にとっても、従業員にとってもハッピーな使い方」を意識することが、
労働基準法を守る第一歩です。

変形労働時間制は、
使い方次第で“武器”にも“リスク”にもなる制度です。

導入時・見直し時には、
ぜひ一度、制度設計と実際の運用が合っているかを確認してみてください。

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