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労働基準法を正しく理解して守る

シリーズ第5回「労働契約書と労働条件通知書の違いと正しい使い方」

「雇用するときは、とりあえず契約書を交わしているから大丈夫」
「昔からこの書式を使っているので問題ないはず」

中小企業の現場では、このような声をよく耳にします。
しかし、労働契約書と労働条件通知書は、役割も法的な位置づけも異なる書類であり、
正しく理解していないと、思わぬトラブルや法令違反につながることがあります。
今回は、実務で混同されやすいこの2つの書類について、簡単に整理します。

1.労働契約書と労働条件通知書の違い

労働契約書(雇用契約書)は、会社と労働者が合意した内容を書面で確認するものです。
法律上、労働契約は「合意」があれば成立するため、必ずしも書面である必要はありません。
しかし、後々のトラブル防止の観点から、書面で取り交わすことが強く推奨されています。

一方、労働条件通知書は、労働基準法第15条に基づき、会社が労働者に対して必ず交付しなければならない法定書類です。
合意の有無にかかわらず、「会社が労働者に通知する義務」がある点が大きな違いです。

2.労働条件通知書に記載すべき内容と法改正のポイント

労働条件通知書には、以下のような内容を記載する必要があります。

・労働契約の期間
・就業場所・業務内容
・始業・終業時刻、休憩、休日、時間外労働の有無
・賃金の決定・計算・支払方法、締切日・支払日
・退職に関する事項(解雇の事由を含む)

特に重要なのが有期雇用労働者に関する記載事項です。
2013年4月施行の改正労働契約法、2018年4月施行の無期転換ルールを背景に、

・契約更新の有無
・更新上限の有無とその内容
・無期転換申込機会
・無期転換後の労働条件

などの明示が義務化・強化されました。

これらの法改正の狙いは、
契約内容が不明確なまま働かされる状況を防ぐこと」と「将来の見通しを労働者が持てるようにすること」にあります。

3.労働契約書と労働条件通知書の正しい使い分け

実務上は、

労働条件通知書としての法定事項をすべて盛り込み
・その内容について労使双方が署名・押印する

という形で、「労働条件通知書兼労働契約書」として運用するケースが多く見られます。
この方法であれば、法令遵守とトラブル防止の両立が可能です。

重要なのは、
「契約書を作っているから通知書はいらない」
「通知書を渡しているから契約書はいらない」
という誤解をしないことです。

4.2024年4月改正の内容

2024年4月の法改正で、労働条件明示ルールが強化されました。背景にあるのは、働き方の多様化が進む中で、
労働者が自分の契約内容を正確に理解できていないまま働いているケースが少なくないという現状です。

この改正により、労働条件通知書には、従来の項目に加えて、

就業場所・業務内容の変更の範囲
契約期間中に更新上限がある場合のその内容

などを、より具体的に明示することが求められるようになりました。

特に有期雇用労働者については、

更新の有無や判断基準
更新回数や通算契約期間の上限の有無
無期転換申込権が発生するタイミング

といった点を、契約締結時および更新時に書面で明確に伝えることが重要です。

この改正の狙いは、
「更新されると思っていた」
「いつまで働けるのか分からない」
といった認識のズレを防ぎ、雇用の透明性を高めることにあります。

有期雇用労働者を雇用している会社であれば、

・古い書式を使い続けていないか
・口頭説明だけで済ませていないか

を改めて確認する必要があります。

5.交付しない場合の罰則・リスク

労働条件通知書を交付しない場合、労働基準法違反として30万円以下の罰金の対象となります。
また、罰則以上に大きいのが実務上のリスクです。

・労基署調査で是正指導を受ける
・労働者との認識違いが紛争に発展する
・解雇・雇止め時に会社側が不利になる

といった事態につながりかねません。

実務上のポイント

「昔からこうしている」、「法改正の内容を知らなかった」などは大きなリスクになります。

✔ 最新の法改正に対応した書式になっているか
✔ 有期雇用者への説明が書面で残っているか
✔ 実際の働き方と書面内容がズレていないか

この3点を、一度チェックしてみてください。

労働契約書と労働条件通知書は、
「会社を守るための“最初の防波堤”」です。
正しく整備し、正しく使うことが、労務トラブル予防の第一歩になります。

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