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労働基準法を正しく理解して守る

シリーズ第6回「出勤簿・タイムカードの保存義務と信頼性」

中小企業の現場で、意外と軽視されがちなのが「出勤簿」や「タイムカード」です。
「給与計算ができれば問題ない」「昔からこのやり方でやっている」という声もよく聞きます。
しかし、労働基準法の観点から見ると、これらは会社を守るための極めて重要な法定帳簿です。
今回は、出勤簿・タイムカードの役割と保存義務、そして“信頼できる勤怠管理”とは何かを実務目線で整理します。

1.なぜ出勤簿・タイムカードが重要なのか

出勤簿やタイムカードは、単なる勤怠管理ツールではありません。労働時間の事実を客観的に記録する証拠書類です。
残業代請求や労基署調査、労使トラブルが起きた際、最初に確認されるのがこの帳票です。

実際の例では、退職した社員から未払残業代を請求された際、「タイムカードが形だけで実態を反映していなかった」ために、
会社側が極めて不利な立場に立たされることがあります。記録が曖昧=会社の主張が通らないという現実があります。

2.出勤簿とタイムカードの役割と目的

出勤簿は、労働者ごとの出勤日・労働日数・労働時間を把握するための帳簿です。
一方、タイムカードは、その根拠となる日々の始業・終業時刻を記録する手段といえます。

両者はセットで機能するものであり、
・タイムカード:事実の記録(一次情報) ※少し前は、「打刻」と言われていました
・出勤簿:管理・集計(二次情報)

という関係にあります。どちらか一方が欠けても、適正な勤怠管理とは言えません。

3.タイムカードが「成立する」ための要件

タイムカードとして最も重要なのは客観性です。
厚生労働省も、労働時間の把握は「使用者の自己申告ではなく、客観的な方法で行うこと」を求めています。

例えば、
・上司がまとめて手書きで記入
・毎回同じ時刻が並んでいる
・実際の残業時間と合っていない

このような記録は、タイムカードが存在しても「信用できない」と判断される可能性があります。

実際の例では、タイムカードはあったものの、申請時間が修正されており、しかも終業時間がいつも同じ時刻に
なっていたため、「実労働時間はもっと長いはず」と推定され(従業員のメモ・帰宅時の家族へのライン等で)、
多額の残業代支払いにつながったケースもあります。

4.出勤簿・タイムカードの法的保存義務

労働基準法第109条により、出勤簿などの法定帳簿は「原則5年間(当面は3年間)」の保存義務があります。
タイムカードも、出勤簿の根拠資料として同様に保存が必要です。

「給与計算が終わったから廃棄した」「データが上書きされて残っていない」という対応は、明確な法令違反となる可能性があります。労基署調査では、保存期間内の提示を求められるのが通常です。

5.信頼性を担保するために会社がすべきこと

信頼できる勤怠管理のためには、
・客観的な打刻方法(ICカード、PCログ、打刻システム等)
・修正ルールの明確化(誰が・いつ・なぜ修正したか残る仕組み)
・実態と乖離しない運用(サービス残業を前提にしない) ※意図的な修正は「改ざん」です!

が欠かせません。

6.まとめ:帳票は“会社を守る盾”になる

出勤簿やタイムカードは、労働者を管理するためのものではなく、ルールを守っている会社自身を守るための証拠です。
いい加減な運用は、後になって必ず大きなリスクとして跳ね返ってきます。
総務・人事部門がない会社こそ、シンプルでもいいので「適正なルール」と「実態に合った記録の保管」をお勧めします。
それが、労使トラブルを防ぎ、安心して経営するための第一歩になります。

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