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シリーズ第3回 「賃金規程の作り方と運用で注意すべき点」
就業規則を「経営ツール」として機能させるうえで、最も重要な規程の一つが賃金規程です。
賃金は従業員の生活に直結し、モチベーションや定着率にも大きく影響します。
だからこそ、曖昧さを排し、体系的に設計する必要があります。
まず原則として、正社員とパート・アルバイト社員の賃金規程は分けて作成することが望ましいでしょう。
雇用形態ごとに職務内容や責任の範囲、配置転換の有無などが異なるため、
それぞれの働き方に応じた設計が必要になります。
次に重要なのが、基準内賃金と基準外賃金を明確に区分することです。
基準内賃金には基本給や役職手当、職務手当など毎月固定的に支払われるものを、
基準外賃金には時間外手当、深夜手当、休日手当、通勤手当などを位置づけるのが一般的です。
何がどこに属するのかを明確にしておかないと、残業単価の計算や社会保険の算定で混乱が生じます。
さらに、必ず定めなければならないのが、
・賃金の締切日
・支払日
・支払方法(現金か銀行振込か)
です。これは労働基準法第24条(賃金支払の原則)および第89条に基づくものです。
また、時間外労働・深夜労働・法定休日労働の割増率も明記します。
法定最低基準は、
・時間外労働:25%以上
・深夜労働(22時~5時):25%以上
・法定休日労働:35%以上
(労働基準法第37条)
です。会社独自で上乗せする場合も、明確に規定します。
賞与を支給する場合には(賞与の支給は義務ではありません)
・支給時期
・評価対象期間
・算定方法
を定める必要があります。そのうえで、
「会社の業績により支給しない場合がある」
「支給額は会社業績および個人の成績評価により決定する」
といったいわゆる“安全弁”を設けておくことが実務上不可欠です。
賞与を固定的賃金と誤解されない設計が重要になります。
定期昇給制度がある場合は、
・昇給月(例:毎年4月)
・昇給の決定基準(評価結果、業績等)
を明確にします。自動昇給のような誤解を招かない表現が必要です。
そして、最も注意すべきは同一労働同一賃金の原則です。
これはパートタイム・有期雇用労働法第8条・第9条に規定されています。
正社員とパート・アルバイト社員の間で、職務内容、責任の程度、配置変更の範囲などが
同じであるにもかかわらず、合理的理由なく待遇差を設けることは許されません。
例えば、
・正社員には賞与があるが、アルバイトには一律で支給されない
・時給換算すると明らかな格差がある
といった場合、その差の理由を合理的に説明できなければなりません。
「アルバイトだから賞与はない」という説明は法的には通用しません。
賃金規程は単なる計算ルールではありません。
会社が「何を評価し、どんな人材に報いるのか」という経営メッセージそのものです。
だからこそ、法令遵守を前提にしつつ、自社の理念と整合した賃金体系を設計することが重要なのです。
さらに言えば、自社の人事評価制度にリンクする仕組みが望ましい形といえます。