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就業規則を経営に活かす

シリーズ第4回 「固定残業時間制の誤解 ― 知らないと危険な4つの落とし穴」

「固定残業代を導入しているから大丈夫」

そう考えている経営者の方は少なくありません。
しかし、固定残業制度は“正しく設計し、正しく運用”しなければ、未払残業代請求求人トラブルの火種になります。

今回は、特に誤解されやすい4つのポイントを整理します。

1.固定残業代を設定すれば、何時間でも時間外労働が許される?

答えは明確に「NO」です。

固定残業代は、あらかじめ一定時間分の時間外割増賃金を支払うという仕組みにすぎません。
労働基準法上の時間外労働の上限規制(いわゆる36協定の限度時間)とは全く別の話です。

たとえば「40時間分の固定残業代」を支給していても、月80時間の残業が許されるわけではありません。
上限規制を超えれば法違反になりますし、当然に追加の割増賃金支払い義務も生じます。

固定残業代=残業し放題の権利ではないのです。

2.月によって固定時間を下回ることもあるから、超えた月も相殺できる?

これも誤解です。

例えば、固定残業20時間の制度で、

・5月:30時間
・4月:10時間

となった場合、「4月は10時間余っているから、5月は追加で払わなくてよい」とはなりません。

固定残業制度は“毎月完結”です。
5月に30時間働いたなら、20時間を超えた10時間分は必ず追加支給が必要です。

固定残業代は“定額制”ですが、“包括払い”ではありません。ここを誤ると未払残業代請求の対象になります。

3.基本給を低くして、固定残業40時間にすれば給与を高く見せられる?

求人現場でよく見かける設計です。

「月給40万円(固定残業40時間分含む)」という表示は、一見すると高待遇に見えます。
しかし、

・基本給が極端に低い
・実質的に長時間労働前提
・割増賃金の計算根拠が不明確

こうした設計は、裁判では無効と判断されるリスクがあります。

特に問題となるのは、

① 基本給と固定残業代が明確に区分されているか
② 何時間分なのか明示されているか
③ 超過分を追加支払いしているか

この3点です。

見せ方優先の設計は、結果として企業の信用を傷つけます。
人材確保のための制度が、逆に離職の原因になっては本末転倒です。

4.深夜労働や休日労働も固定残業時間に含めてよい?

ここも非常に重要です。

時間外労働(25%)
深夜労働(25%)
休日労働(35%)

これらは割増率が異なります。

「固定残業40時間」に深夜・休日分もまとめて含める場合は、割増率ごとに区分し、
金額の根拠を明確
にする必要があります。

単に「固定残業代として○円」とだけ記載していると、無効と判断される可能性が高くなります。

固定残業制度は“制度設計の精度”がすべて

固定残業制度自体が違法なのではありません。
問題は、“理解不足のまま導入していること”です。

✔ 上限規制との区別
✔ 毎月完結の追加支払い
✔ 明確な区分表示
✔ 割増率ごとの整理

これらが整って初めて、固定残業制度は有効に機能します。

「高く見せる制度」ではなく、
「透明性のある賃金制度」にできているか。

一度、自社の賃金規程を点検してみてはいかがでしょうか。

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