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会社にとってよい人事評価・賃金制度とは

シリーズ第1回 「公平な人事評価制度とは?」

「うちの会社も人事評価制度を作ってほしい」

社会保険労務士としては会社からその依頼を受けた時には、その前に必ず
「何のために評価制度を作るのでしょうか?」とお聞きするようにしています。
しかし、この質問に明確に答えられる会社は意外と多くありません。
「社員数が10人を超えたので、人事評価制度もあったほうがいいのかなと思って」という回答が一般的です。

評価制度というと、社員の能力を測るもの、社員に点数を付けるもの、昇給や賞与を決めるもの
と考えられがちです。
しかし、それは評価制度の一部の機能に過ぎないと考えます。
人事評価制度の設計や運用の本来の目的は別のところにあると考えています。

それは、「会社(社長)の方針・戦略・価値観を社員に伝え、その実現に向けて行動してもらうための仕組み
であるということです。
評価制度は人を評価するためのものではありません。

会社が目指す方向を共有し、社員一人ひとりが同じ方向を向いて進むための経営ツールなのです。
だからこそ、人事評価制度は社長の考え方そのものを全面に打ち出す必要があります。

評価制度の話になると、必ず出てくる言葉があります。
「公平な評価制度にしてほしい」という言葉です。もちろんその考え方は重要です。
しかし、ここで一度立ち止まって考えてみる必要があります。

そもそも「公平」とは何でしょうか。全員を同じように扱うことなのでしょうか。
同じ給与を支払うことなのでしょうか。私は違うと思います。
会社は仲良しクラブではありません。社会に価値を提供し、その対価として利益を得る組織です。
利益を上げることで社員の生活を支え、取引先との信頼関係を築き、税金を納め、社会に貢献しています。

そのために必要なのは、「会社の想いの実現や目標達成に貢献した人が適切に評価されること」です。
これこそが本当の意味での公平性ではないでしょうか。

一方で、「みんな同じ」、「誰も傷つけない」
という考え方だけで評価制度を作ると、結果として頑張る社員が報われなくなります。
それは平等に見えて、実は不公平です。私はこれは「エセ平等」と呼んでいます。

会社経営は理想論や感情論では成り立ちません。
会社が継続し、社員が安心して働き続けるために必要な公平性とは何かを考える必要があります。

もう一つ、多くの会社で見られる問題があります。
それは、「評価制度はあるが運用されていない」ということです。
立派な評価シートがあります。評価項目も細かく決まっています。
しかし実際には、年に1回あるいは2回、昇給や賞与の時期になって初めて取り出される。
そして評価というより、「査定」だけが行われる。

こうした会社は少なくありません。
しかし私は、「査定」と「評価」はまったく別物だと考えています。
査定とは結果です。評価とはプロセスです。
本来の評価とは、社員の良い行動を認め、会社が期待する方向へ導き、改善が必要な部分を伝え、
成長を支援する活動
です。
つまり年間を通じて行われるべきものなのです。

年に2回だけ評価シートを開くことを評価制度と呼ぶのであれば、それは評価制度ではなく査定制度です。
そして最も深刻なのは、評価がなく査定だけが存在する会社では、社員の信頼を得ることが難しいということです。

なぜなら、日頃は何も言われない。指導もない。教育もない。
ところが賞与の時期になると突然、「あなたの評価はこれです」と言われる。
社員の立場からすれば、「それなら早く言ってほしかった」、「改善する機会が欲しかった
と思うのではないでしょうか。

評価制度は社員を裁くためのものではありません。社員を育てるためのものです。
そして会社の方針を浸透させるためのものです。
人事評価制度の本質は社員の序列を決めることではありません。
会社が大切にしている価値観を伝え、正しい仕事の進め方を示し、社会人として成長する方向へ導くための仕組み。
それが人事評価制度です。

だからこそ、年に2回の査定のためだけに使うのは本末転倒です。
評価制度とその運用は「経営」そのものと言えるのではないでしょうか。

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