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【トラブルを未然に防ぐ労務管理】

シリーズ第2回 「解雇トラブルを起こさないための手順と記録」

「就業規則に解雇事由を定めているから、問題のある社員は解雇できる。」
このように考えている経営者は少なくありません。しかし、実務ではそう簡単な話ではありません。
就業規則に解雇事由を定めることはもちろん重要です。
しかし、それだけで直ちに解雇できるわけではありません。

日本の労働法制は、労働者の生活を守るという考え方を基本としており、
会社が一方的に解雇できない仕組みになっています。
そのため、実際の解雇では、就業規則だけではなく、
客観的に合理的な理由」があり、「社会通念上相当」であることが求められます。

この「社会通念上相当」という言葉は、少し分かりにくいかもしれません。
分かりやすく言えば、
100人に事情を説明したとき、99人が『そこまで会社が努力したのなら仕方がない』と言ってくれるかどうか。

これが一つの目安です。
例えば、「業務遂行能力が著しく不足している」という理由だけで、すぐに解雇することはできません。
能力不足があるのであれば、まず会社には教育する責任があります。
①仕事の教え方に問題はなかったのか。
②適切な指導は行われたのか。
③配置転換によって能力を発揮できる可能性はなかったのか。
④繰り返し面談を行い、改善の機会を与えたのか。
⑤会社としてできる限りの支援を行ったのか。

こうした努力を積み重ねた結果、それでも改善が見られなかったという事実が初めて重要になります。
つまり、解雇が認められるかどうかは、社員の問題だけではなく、会社がどれだけ教育責任を果たしたかも問われるのです。

そして、もう一つ絶対に欠かせないものがあります。
それが「記録」です。
「何度も注意しました。」、「何回も面談しました。」会社がそう説明しても、記録がなければ第三者には証明できません。

①いつ、誰が、どのような内容を指導したのか。
②本人はどのような反応だったのか。
③改善目標を設定したのか。
④その後、どのような変化があったのか。

これらを面談記録教育記録として残しておくことが極めて重要です。
本気で教育を行った事実と、その経過を客観的に示す記録。
この2つがそろって初めて、会社は解雇という次の段階を検討することができます。

この順番を決して間違えてはいけないと思っています。まず解雇ありきではありません

最初に考えるべきことは、「この社員を教育によって戦力にできないだろうか」という視点です。
教育を尽くし、それでも改善が難しい場合に初めて次の判断へ進むのです。

この過程は、対象となる社員だけが見ているわけではありません。職場の全社員が見ています。
会社が本気で育てようとしている姿勢は、周囲の社員にも伝わります。

反対に、十分な指導もなく突然解雇するような会社であれば、
「明日は自分も同じ立場になるかもしれない」という不安を職場全体に与えてしまいます。

だからこそ、解雇は単なる法律問題ではなく、会社の信頼を左右するマネジメントの問題でもあるのです。
①配置転換という選択肢はなかったのか。
②再教育は十分だったのか。
③業務内容の見直しは行ったのか。
④会社としてできる努力を最後まで尽くしたのか。

そのすべてを記録として残しているのか。この積み重ねが会社を守ります。

解雇とは社員を辞めさせるための制度ではなく、「最後の最後の選択肢」だと考えています。
本気の教育と、本気のフォローを行い、その事実を客観的に記録する。
そして感情ではなく、就業規則と事実に基づいて冷静に判断する。

これこそが、解雇トラブルを未然に防ぐ最も確実な労務管理ではないでしょうか。

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