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【トラブルを未然に防ぐ労務管理】

シリーズ第3回 「休職制度の正しい運用」

社員が病気やケガ、あるいはメンタル不調などにより仕事を続けることが難しくなったとき、
多くの会社が利用するのが「休職制度」です。
しかし、実は休職制度は労働基準法で会社に義務付けられている制度ではありません。
会社が就業規則に定めることで初めて運用できる制度です。

だからこそ、制度の内容を曖昧にしたまま運用すると、大きな労務トラブルへ発展する可能性があります。
まず理解しておきたいことは、休職とは社員が自由に取得する制度ではなく、
会社が命じる制度であるということです。

社員から「休職したい」と申し出があったとしても、そのまま休職になるわけではありません。
会社は本人の健康状態や就業状況などを総合的に判断し、就業規則に定めたルールに基づいて休職を命じます。
そのため、就業規則には「どのような場合に休職を命じるのか」という要件を具体的に定めておくことが重要です。

そして、休職制度でもっとも大切なことがあります。
それは、休職は復職を前提とした制度であるということです。
休職は会社から離れる(離す)ための制度ではなく、心身を回復させ、
再び安心して職場へ戻るための準備期間なのです。

だからこそ、就業規則には休職開始の条件だけでなく、「どのような状態になれば復職できるのか」という
基準も明確に規定しておかなければなりません。
復職の判断が曖昧であれば、本人にも会社にも大きな不安が残ります。

また、休職期間についても合理的な範囲で定める必要があります。
例えば、勤続年数に応じて6か月、1年、あるいはそれ以上と区分する方法も一般的です。
会社の規模や体力によって期間を設定することは問題ありません。

ただし、あまりにも短期間しか認めない制度では、合理性を欠くとして無効と判断される可能性もあります。
休職制度は、会社の事情だけで決めるものではなく、社員の回復可能性とのバランスを考えて設計することが重要です。

さらに、休職期間が満了した場合の取り扱いも明確にしておかなければなりません。
実務上は、「休職期間満了による自然退職」と規定している会社が多く見られます。

これは、会社が一方的に解雇するのではなく、あらかじめ就業規則で定めた条件により
雇用契約が終了するという考え方です。
この点も、後々のトラブルを防ぐために重要な規定となります。

特に近年増えているメンタルヘルス不調による休職では、復職の判断に慎重さが求められます。
ここで注意したいのが、主治医の診断書だけで復職を決定してしまうことです。
主治医は患者の日常生活への復帰という観点から診断を行います。
しかし、会社が知りたいのは、「業務を安全かつ継続的に遂行できる状態か」という点です。

そのため、就業規則には会社が指定する産業医や専門医の意見を踏まえて
復職を判断することを規定しておくことが必要です。
会社と本人が同じ認識で復職を進めることが、再発防止にもつながります。

休職制度を運用するうえで最も避けたいのは、「その場の判断」で対応してしまうことです。
ルールがないまま、恣意的に「今回は休職にしよう」「今回は復職させよう」と判断すれば、
社員によって対応が異なり、不公平感やトラブルの原因になります。
だからこそ、就業規則にルールを明確に定め、そのルールに沿って運用することが重要なのです。

そして忘れてはならないのは、休職制度の目的です。
休職制度は社員を職場から遠ざけるための制度ではありません。
安心して治療に専念し、十分に回復したうえで、再び会社で力を発揮してもらうための制度です。
復職を焦らせることも、反対に必要以上に長引かせることも、本人にとって良い結果にはつながりません。

就業規則というルールに基づき、医学的な判断を踏まえながら、一人ひとりに寄り添って運用すること。
それこそが、トラブルを未然に防ぎ、社員と会社の双方を守る休職制度の正しい姿ではないでしょうか。

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