ブログ

【トラブルを未然に防ぐ労務管理】

シリーズ第5回 「長時間労働の是正指導を受けないために」

「今月は残業45時間を絶対に超えるな!」

長時間労働が問題になっている会社では、こんな指示が管理職から出されることがあります。
労働基準法上、時間外労働を行わせるためには36協定の締結・届出が必要であり、時間外労働には原則として
月45時間、年360時間という上限があります。
臨時的な特別の事情がある場合には、特別条項付きの36協定を締結することもできます。

もちろん、こうした法的なルールを守ることは会社として当然です。
しかし、それだけでは長時間労働の問題は解決しません。
大切なのは、「なぜ、この会社では長時間労働が発生しているのか」を突き止めることです。

そもそも会社の中に、
「うちは忙しいから、残業が多いのは仕方がない。」
「この業界では長時間労働は当たり前だ。」
という意識がありませんか?

もし経営者や管理職自身がそう考えているのであれば、問題の抜本的な解決は難しいでしょう。
長時間労働には、必ずと言っていいほど原因があります。
・仕事量そのものが多すぎるのか。
・人員が不足しているのか。
・業務の分担が適切ではないのか。
・管理職が仕事を抱え込んでいるのか。
・無駄な会議や報告書が多いのか。
・顧客からの急な依頼に対応する仕組みがないのか。

あるいは、「仕事は最後まで完璧にやらなければならない」という社員の意識が原因なのか。
まず、その原因を見つけなければなりません。

そして、その原因を会社だけで考えるのではなく、労使で一緒に考えることが重要です。

ところが、現実にはこんな場面を目にすることがあります。
このままでは労基署に指摘されるぞ。今月は何としても45時間を切れ!
管理職や管理部門が社員にこう指示する。

すると社員は、
「45時間を切れと言われるなら、仕事は終わりませんけど、それでいいんですね?」
となります。
これでは、会社と社員の間に新たな緊張関係を生むだけです。
残業時間という「数字」を減らすことが目的になり、仕事そのものは何も変わっていないからです。
場合によっては、仕事を自宅に持ち帰ったり、サービス残業が発生したりすれば、さらに深刻な問題になります。

長時間労働対策で本当に必要なのは、
「残業を減らせ」ではなく、「なぜ残業が必要なのか、一緒に考えよう」
という会社の姿勢ではないでしょうか。

例えば、
・業務を洗い出し、やめる仕事を決める。
・優先順位を見直す。
・仕事を標準化する。
・ITを活用する。
・権限を現場に移す。
・一人に集中している業務を複数人で担当できるようにする。
・顧客との納期やサービス内容を見直す。

こうした地道な取り組みを積み重ねて、初めて長時間労働は減っていきます。
つまり、36協定を整備することは「法的な入口」にすぎません。
本当に重要なのは、その先にある業務改善への挑戦です。

私は、長時間労働の問題は「労働時間の問題」であると同時に、「経営の問題」だと考えています。

社員に「45時間を切れ」と命令するだけなら簡単です。
しかし、その45時間の中に何の仕事があり、なぜそれだけの時間が必要なのかを経営者と管理職が理解し、
社員と一緒に改善していくことには、本気の経営努力が必要です。

そして、その努力こそが会社を強くします。
長時間労働をなくすことは、単に労基署から指導を受けないためではありません。
社員が健康に働き、仕事の質を高め、生産性を向上させ、会社が持続的に成長するためです。

「残業時間を減らせ」という号令から、「どうすれば、この仕事をもっと短時間で、もっと良くできるか」という前向きな対話へ。

長時間労働の抜本的な解決は、そこから始まるのではないでしょうか。

PAGE TOP