お電話でのお問い合わせ080-3007-4864

シリーズ第11回 「残業時間の計算方法」
「残業代は、基本給を時間で割って25%増しにすればいい」そう思っていませんか?
残業代の計算は、一見すると簡単そうですが、実は間違いの起こりやすいところです。
今回は、残業代を計算するときに、経営者や労務担当者が特に注意したいポイントを整理します。
まず、割増賃金の基本です。
・法定労働時間を超えた時間外労働……25%以上
・法定休日の労働……35%以上
・午後10時から午前5時までの深夜労働……25%以上
・1か月60時間を超える時間外労働……50%以上
となっています。
さらに、時間外労働が深夜に及べば、時間外25%+深夜25%で、50%以上の割増となります。
法定休日労働が深夜に及んだ場合は、35%+25%で60%以上となります。
では、この「25%」や「50%」を掛ける元になる「1時間当たりの賃金」は、何を基準にするのでしょうか。
ここが、非常に間違いやすいところです。
原則として、通常の労働時間または労働日の賃金は、名称にかかわらず割増賃金の計算基礎に含まれます。
ただし、法律上、次の7つは限定列挙されており、一定の要件を満たすものは計算基礎から除外できます。
①家族手当
②通勤手当
③別居手当
④子女教育手当
⑤住宅手当
⑥臨時に支払われる賃金
⑦1か月を超える期間ごとに支払われる賃金
ここで注意したいのは、手当の名前だけで判断してはいけないということです。
例えば「住宅手当」という名前でも、住宅費とは関係なく全員に一律で支給しているのであれば、除外できない場合があります。
実際の支給方法や内容で判断する必要があります。
では、具体例で考えてみましょう。
【例1】管理監督者ではない係長の場合
管理監督者ではない係長に、
基本給 30万円
通勤手当 1万円
家族手当 1万円
外勤手当 3万円
役職手当 2万円 が支給されているとします。
この場合、割増賃金の計算基礎となるのは、30万円+3万円+2万円=35万円 です。
※通勤手当と家族手当は、除外できるものとして計算します。
一方、外勤手当や役職手当は、7つの除外項目には該当しないため、原則として計算基礎に含めます。
この35万円を、年間の所定労働時間などを基に1か月平均の所定労働時間に換算して、1時間当たりの賃金を算出します。
そして通常の時間外労働であれば、1時間当たりの賃金 × 1.25 として計算します。
よくある間違いが、基本給30万円だけを基準にして残業代を計算してしまうことです。
外勤手当や役職手当など、除外できない手当まで計算から外してしまえば、残業代の不足が発生する可能性があります。
【例2】管理監督者の場合
では、管理監督者である社員の場合はどうでしょうか。
今回は、この社員が労働基準法上の**「管理監督者」に該当するものとして**考えます。
固定給 45万円
役職手当 8万円
通勤手当 1万円 とします。
管理監督者には、労働時間・休憩・休日に関する規定が適用されないため、時間外労働や法定休日労働について、
通常の労働者のような割増賃金を支払う必要はありません。
しかし、深夜労働については別です。
管理監督者であっても、午後10時から午前5時までの深夜労働については、25%以上の割増賃金を支払う必要があります。
この場合、深夜割増の計算基礎は、45万円+8万円=53万円 です。
※通勤手当1万円は除外します。
ここで、一般社員との違いを理解しておくことが重要です。
一般社員が法定時間外に働いた場合は、1時間当たりの賃金 × 1.25 として計算します。
これは、通常の賃金1.00に、時間外労働に対する0.25の割増を加えるからです。
一方、管理監督者については、時間外労働に対する0.25の割増は必要ありません。
そのため、深夜に働いた場合に追加して支払うのは、1時間当たりの賃金 × 0.25 となります。
例えば、53万円を所定労働時間から1時間当たりの賃金に換算した結果、1時間当たり3,000円だったとします。
一般社員が深夜の時間外労働を1時間した場合は、3,000円 × 1.50 = 4,500円 となります。
一方、管理監督者が深夜労働を1時間した場合は、
3,000円 × 0.25 = 750円 を、通常の賃金とは別に追加して支払うことになります。
つまり、
一般社員の時間外+深夜→ 1.00+0.25+0.25=1.50
管理監督者の深夜労働→ 通常の賃金1.00は支給済みなので、追加は0.25 という違いです。
「管理監督者だから残業代は必要ない」という理解だけで終わってしまうと、深夜割増を支払うことを忘れてしまう
可能性があります。
なお、今回「管理監督者」として計算しましたが、ここにも大きな注意点があります。
一般的に「課長」「部長」「店長」などの肩書が付いているからといって、労働基準法上の管理監督者になるわけではありません。
管理監督者とは、法律上、労働時間等の規制の適用除外を受けるだけの、かなり重要な位置付けです。
では、誰が管理監督者に該当するのか?
これは、実際の職務内容、責任と権限、勤務態様、待遇などを踏まえて判断する必要があります。
この「管理監督者とは誰なのか」というテーマについては、次回、詳しく取り上げたいと思います。
今回のポイントは、まず、
①何が時間外・休日・深夜労働なのか
②何を割増賃金の計算基礎に入れるのか
③1時間当たりの賃金をどう算出するのか
④管理監督者でも深夜割増は必要である
ということです。
残業代の計算は、「25%を掛ければいい」という単純な話ではありません。そして、計算ミスは毎月積み重なります。
「少しくらいの間違いなら……」と放置していると、後になって大きな未払い賃金の問題になることもあります。
残業時間を減らすことも大切ですが、その前に、「今支払っている残業代は、本当に正しく計算されているのか?」
一度、自社の給与計算を確認してみてはいかがでしょうか。